JOURNAL

ZENONE

前編

捨てられるモノに価値観を見出す
そこからまた新しいコトが生まれる

今回のJOURNALはvol.23でインタビューを行った、GRAND COBRAの松田さんとの会話にも出たグラフィティライターのZENONEさんが登場。飛び出し坊やをアレンジした“TOBIDASHI BOYS”、垂れたペンキをモチーフとした“ドリップデザイン”をはじめ、氏が生み出す色彩豊かなアートワークは、これまでのグラフティの世界観を覆すポップなものばかり。そんな作風を映し出したような朗らかな人柄で、常に笑いに包まれた対談になりました。

渡會:GRAND COBRAの松田さんからお話を聞いて、ぜひウチのJOURNALにご登場いただきたいとオファーをさせていただきました。今回はよろしくお願いします。

ZENONE:わざわざ足を運んでもらってありがとうございます。散らかっているアトリエですみませんが、よろしくお願いします。

渡會:最初にこれまでのキャリアを教えてください。

ZENONE:学生の頃から絵を描くのが好きなオタク気質な性格で、18歳のときにブラックミュージックにどっぷりハマって、CDやレコジャケの中にあるグラフィティに惹かれ、真似するように描いたのがルーツですね。若い時だったので勢いもあるじゃないですか? 20歳の頃にはスプレー缶を持って落書きもどきみたいなこともしましたよ。クラブによく出入りしていたので、DJの友人からミックステープのジャケットを依頼されたのがキャリアのスタートみたいなもんです。

 

渡會:もう25年以上も前の話ですよね?

ZENONE:当時はネットがない時代だったので情報を集めるのにはなかなか苦労しましたよ。アメ村(通称「アメリカ村」と呼ばれる大阪のファッションエリア)にグラフティの洋服屋があったんですけど、そこで輸入している海外の雑誌を買い漁って。眺めては「オーッ」となって真似して描いての繰り返しで。どんどん自分好みのスタイルが確立されてきた感じです。

 

渡會:それで紙の上だけでは物足りなくなったんですか?

ZENONE:文字やキャラクターを描くうちにどんどん洗練されてきて、どうしても紙の上では収まりきらなくなったのが理由ですね。あとマッチョくん(GRAND COBRAの松田さん)らの影響も大きかったですね。彼のように鉄は扱えないですけど、比較的、手に入りやすい木材を扱って、切ったり貼ったりしながら作品を作っています。

他のアーティストとコラボして空間作りすることも面白い

 

渡會:企業から請け負う仕事でも同じ手法ですか?

ZENONE:最近はマッチョくんや他ジャンルのアーティストと新しくオープンするホテルの空間作りを請け負うことが多いのですが、鉄を使ったり和紙を使ったりと、手がけるのは様々です。それが僕の作品というと話は別になってしまいますが、どこかで自分の色は出せるんじゃないかとは思っています。

 

渡會:ZENONEさんの“色”、“らしさ”というのは?

ZENONE:グラフィティでいうとゴリゴリのスタイルというよりもポップなのが好きなんです。街に落とし込まれたときにスラム感は出したくないし、何より一般の人が見て嫌われるのってイヤじゃないですか。子供でも女性でも受け入れやすい明るい色、ポップな柄、そして文字もおどろおどろしいのじゃないもの。やっぱりこれが自分のスタイルなので、出来ることを突き詰めている感じですね。

 

渡會:ここ最近でご自身で作ったもので、面白いんじゃないかと思うものはありますか?

ZENONE:この前の合同展で出した作品ですかね。分厚い紙をカットして、紙とかステッカーを貼って3Dの造形物にして。何周かしてまた紙を重ねるのがカッコいいなと思って。グラフィティライターとしてやってるつもりなので、やっぱり大好きな文字をどう落とし込むか毎回考えています。ただ、自分の中で“これが絶対”というものがないんですよ。思いつきや気付きが作品に繋がることもありますね。

無駄と思われることがアートの本質

渡會:具体的なエピソードはありますか?

ZENONE:鉄の造形の美しさ、発想力、重圧感を操るマッチョくんの存在はデカいんですね。ホテルの仕事などで自分が考えたデザインをマッチョくんに提案するんですけど、「これってできるんかな?」って頭の中で一瞬よぎるんですが、それを軽く超えてくるんですよ。想像以上のものを目の前にすると、何でもやってみないと分からないなと思って。それで気付いたことがあれば、どんなことでもやってみようと。これ(トーマスの顔を埋め込んだ木工のオモチャ)もその中の一つなんです。

渡會:めちゃくちゃ可愛いですね!!

ZENONE:このトーマスの顔ってラムネのケースの一部なんです。子供が毎日のように食べるから大量に余っていて。よく見ると顔のクオリティがめっちゃ高いんですよね。この顔を使って「何か作ってみよう」と思って生まれたのがこの木製ロボットです。無駄か無駄じゃないかって言われたら無駄ですけどね(笑)。誰も喜ばない自己満の世界なんです。でもアートの本質ってそこかなと。たまたま作ったものを見てもらったら、人が「良いやん」って言ってくれただけの話で。

渡會:耕平さん(THE UNIONの牧田さん)から「ZENONEさんのアトリエに行ったら、なんかオモロイもんあるで」って聞いていたのでグッときてます。

ZENONE:捨てられるものに価値観を見出すのが好きなんですよ。店舗が潰れるのを見たり、廃墟を覗いたりするとドキドキしますもんね。絶対に掘り出し物が出るよって。この前、ボーリング場が潰れるって知り合いから聞いて、入れてもらえることがあったんです。そこは本当に宝の山でしたね。持って帰ってきたレーンをテーブルの天板にアレンジしました。でも、解体する時間がほとんどなかったので、最後はボーリングの球を壁にぶつけて悪ふざけしてました。

後半はZENONEさんの今後の目標やクラフトマンシップについてお聞きしました。

 

TEXT:Shohei Kuroda
Photo:Takeshi Uematsu(VELBED.)

ZENONE

https://www.instagram.com/zenone_nbs/?hl=ja

90年代初期からスプレー缶を握って活動する、大阪を代表するグラフティライター。数々のアパレルブランドとコラボを展開したり、イベントで壁画に作品を描いたりと、様々なアートワークを世に送り出してきた。さらにグラフティの世界を飛び出し、現在ではウッドを用いた造形物の制作にも取り掛かるなど活躍の場を広げている。趣味は数台ほど所有している自転車のライド。自宅からアトリエまでの片道約10kmの距離を自転車で通勤。「といっても過ごしやすい季節だけですが。その影響で真夏と真冬はクルマ移動が多くなるので太りがちです・・・(笑)」。