JOURNAL

TAISUKE KOJIMA

前編

いい庭を作ることは、人間を知ること

造園家と聞いて、どんな姿を想像するだろう? 日本庭園に木を植える人? もちろんそれも間違ってない。でも、今回尋ねた小島さんは、そんな“いわゆる”なイメージを、軽やかに超える。庭づくりから建築設計に内装、ロゴやサインのデザインと、庭を起点に建物の中も外も、総合的に扱っている。今回は、ORGAN CRAFTともゆかりの深い、マルチな造園家のこだわりに触れる。

建築は一つごとを突き詰めることが正解じゃない

パチリパチリと小気味のいいハサミのリズムが響く。神奈川県の一軒家、槙の木の剪定をしているのが、今回話を聞く小島泰介さんだ。

「自然樹形を生かしながら、余分な枝を取り除いていきます。全体の色合いやボリューム感は残しながら、軽くする感じですね。スピードも大切なんですよね。冬だと4時には片付けないと暗くて見えなくなるんで。昼に現場やって、夜は図面書いたり、銭湯行って温冷浴したり。けっこう好きですね、風呂」

小島さんは1988年生まれ。工務店や植木屋で修行を積み、3年前に独立。神奈川県の茅ヶ崎を拠点に、造園や庭木の剪定、建築や内装を手掛けている。

「独立して最初の仕事が、住宅の半分を店舗にして、さらに庭も作る案件だったんですよね。江ノ島のシュガリーってお菓子やさん。庭から店舗がどう見えるか、そこに暮らす人がどう働いて、どこでどう休むのか。中も外も総合的に考えてっていう、一番やりたかった仕事だったんで、嬉しかったですよ」

例えば、いい庭があれば、ちょっと外に出てビールでも飲みたくなる。窓から季節の移ろいを感じ、気分に余白が生まれる。人の行動や感情に働きかけることが、庭の効用だとするなら、庭づくりは人間について考えることだ。

「だから、庭づくりって、庭のことだけ考えればいいわけじゃないんです。庭の先には必ず建物があって、そこに暮らす人がいるんで。本当にいいものを作るには、建物のことも人のことも知っていないといけないですよね」

肩書は造園家と建築家。ロゴやサインに名刺のデザインもやる。図面を描き、庭のイメージを考え、材料の手配や工程の段取りもする。手を動かして庭石や垣根などの工事もする。もちろん剪定などのメンテナンスもする。これって、けっこう庭師の範疇を超えている。

「いわゆる植木屋というような、剪定の仕事も多いですよ。でも庭に限らず、意識的に色々手を出したいとは思ってますね。例えば、専門学校の講師も目指してますし、ラジオ番組作ったりとかもしたいんです。尊敬している建築のカメラマンの方が言うんですよね、『建築は人生だから、年配の人には勝てないよ』って。建物も庭も人の生活全体に関わるし、人生経験を重ねて人間を知らないと、深みのあるものはできない。だから僕は、庭の技術だけ突き詰めることが正解とは思ってないんです」

 

植木をやるつもりなんてなかった

小島さんの実家は、茅ヶ崎の昔ながらの造園業。高校を卒業したあとは専門学校で建築とデザインを学んだ。建物の原体験は、学生時代に建築に受けた衝撃だった。

「学生時代、五十嵐淳さんという建築家の方のところでインターンで働かせてもらったことがあるんです。五十嵐さんが設計した住宅に入れていただく機会があったんですけど、もう衝撃的で。光がグラデーションを描くように作られてるんですよね。それにくらっちゃったんですよね。建築ってすごいんだって。あの体験は今もずっと残ってます」

造園家の息子として生まれたけれど、庭よりは建物に夢中だった。専門学校を卒業した後は、設計事務所や工務店で経験を積んだ。

「3年前に親父が癌になっちゃって、実家の造園業を継ぐという話が出て。結局親父は治ったんでよかったんですけど、親父について植木やり始めたら面白くて。設計だけをやってた頃は1日中机に向かってましたけど、今は庭で体動かしながら考える感じが良くて。庭も建物も含めて、両方あるバランスがいいんだって、今はそう思ってますね」

後半では、小島さんが考える庭や建物の醍醐味と、クラフトマンシップを聞く。

PHOTO:Takeshi Uematsu
TEXT:Masaya Yamawaka(1.3h/イッテンサンジカン)

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小島 泰介

建築家/造園家/デザイナー

設計事務所、工務店での勤務を経て父が経営する造園会社に参画。
前職での現場作業補助、仕上の経験を経てモノづくりに傾倒。
現在は庭の製作や剪定をしつつ、建築、グラフィックなども手掛ける建築業界のマルチプレイヤー。

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