JOURNAL

ZENONE

後編

ゼロからの物作りなので遠回りしますが
そこに無駄なものは何もありません。

今回のJOURNALはvol.23でインタビューを行った、GRAND COBRAの松田さんとの会話にも出たグラフィティライターのZENONEさんが登場。飛び出し坊やをアレンジした“TOBIDASHI BOYS”、垂れたペンキをモチーフとした“ドリップデザイン”をはじめ、氏が生み出す色彩豊かなアートワークは、これまでのグラフティの世界観を覆すポップなものばかり。そんな作風を映し出したような朗らかな人柄で、常に笑いに包まれた対談になりました。

渡會:ところでZENONEというのはどういう意味ですか?
ZENONE:小学校の時から同い年の友達から“ゼンさん”って愛称で呼ばれていて。座禅のゼンでもあるので、言葉として良いじゃないですか。そしてグラフティでワンというのは、俺一人だけみたいな意味合いがあって。それでZENONEとネーミングしました。次にゼンというグラフティライターが出るとZENTWOになるっていう暗黙のルールがあるんです。でも北欧にいるんすよ一人、ZENONEってアーティストが。接触したこともないので自分は変える気さらさらないですけどね。認知は世間が決めることなんで・・・。絶対に僕の方がイケてます(笑)。

SNSは作品の良し悪しを参考にする為のツール

渡會:ネットで情報をよく収集するんですか?
ZENONE:よく見ますよ。自分はオフィシャルのサイトもないしどんどん闇に隠れていってますけど。でもインスタだけはやってます。基本的に作品や仕事のことを発信するだけですが・・・。SNSを見だすと時間を忘れて掘ってしまうクセがあるので今はあんまり見ないようにしてます。寝る前に流してチェックしてるくらいです・・・。とは言っても自分がアップしたモノは反応が気になってしまいますけどネ(笑)

渡會:誰もがそうだと思いますよ。
ZENONE:あとインスタ映えって言葉があるでしょ? あの言葉はどうも好きになれないんですよ・・・。でも仕事になると「このオブジェってインスタ映えするでしょ」って平気で言ってしまう自分があるんです。クソっすね!(笑)。

渡會:ガハハハハ。とても面白いトークありがとうございます。ZENONEさんは生まれも育ちも大阪なんですか?
ZENONE:実は生まれは埼玉で、4歳の頃に大阪へ引っ越してるんで、エセ関西人です。誰も気にしてないんで言わないだけですが、根っからの関西人じゃないからイントネーションがおかしいってよく言われますね。今でも関東圏の人と話す時は標準語っぽくなるので、家族にはキモいと言われます(笑)

渡會:ユニークなZENONEさんとお仕事してみたいです。ウチの会社で何かのお店を運営するときはぜひ壁に絵を描いてください。
ZENONE:すごく興味あります。ぜひお願いします。出来るだけ広いキャンパスにこれまでの蓄積した知識やセンスをテーマに沿って落とし込みたい。あとこれは今後の自分の目標でもあるのですが、どんどん日本の文化に入り込んでいきたいですね。

西洋文化のグラフティに和の要素を入れて海外に発信したい

渡會:次はそのような日本の伝統文化を意識することですか?
ZENONE:そうですね。表現するものはどんなものでも良いと思っています。西洋のグラフティに和をマッチングさせるなど。例えば和紙の柄をポップにアレンジしても良いし、お茶碗に自分なりのグラフティを入れても良いし。グラフィティって西洋の文化を真似しているようなモノなので、どうしてもアメリカやヨーロッパのメンツとぶち当たっても簡単に対抗できないんですよね。和のエッセンスを入れてグラフティに落とし込めば、海外の人にも気軽に受け入れてもらえるんじゃないかと思って。頭をもっと柔軟にして、次は日本の文化を作品に混ぜ込んでみたいですね。

渡會:最後になってしまいますが、ZENONEさんにとってクラフトマンシップとは?
ZENONE:前にも言いましたが無駄だと思うことも積極的にすることですね。無駄の中から次のクリエイトに繋がるし、無駄の中に成功が入っていると思っています。結局は無駄なものは何もないんですよ。アトリエの中は無駄なものが溢れかえっていますが、職人ってやっぱりそういうもんだと。偏見なのかもしれませんが、綺麗なアトリエの職人って本当にクリエイトしてるのかな?って思いますよ。常に色々なアンテナを張って、浮気もするけどあらゆることにチャレンジするのが大切かなと。ゼロから物を作る仕事はやっぱり大変で、常日頃から吸収力を養うようにしています。気がついたら仕事とは関係ない全然違うモノを分解し始めて元に戻せなくなってゴミにしてしまったりとか・・・(笑)でもそこに何かあると思ったらとことん追いかけてしまうんです。どんな小さなことでも何か発見があるんじゃないかな?・・・と。その積み重ねが力になっていくんだと信じています。

 

TEXT:Shohei Kuroda
Photo:Takeshi Uematsu

ZENONE

https://www.instagram.com/zenone_nbs/?hl=ja

90年代初期からスプレー缶を握って活動する、大阪を代表するグラフティライター。数々のアパレルブランドとコラボを展開したり、イベントで壁画に作品を描いたりと、様々なアートワークを世に送り出してきた。さらにグラフティの世界を飛び出し、現在ではウッドを用いた造形物の制作にも取り掛かるなど活躍の場を広げている。趣味は数台ほど所有している自転車のライド。自宅からアトリエまでの片道約10kmの距離を自転車で通勤。「といっても過ごしやすい季節だけですが。その影響で真夏と真冬はクルマ移動が多くなるので太りがちです・・・(笑)」。

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