JOURNAL

TAISUKE KOJIMA

後編

劣化よりも変化を楽しむ

ORGAN CRAFTともゆかりの深い、造園家/建築家の小島泰介さん。後編となる今回は、作り手としてのこだわりに触れる。建物や庭って何のためにあるのか? 何を大切に仕事をするのか? 小島さんのクラフトマンシップは、ORGAN CRAFTとも通じる働きかたの話に繋がっていく。

建築の視点から庭を考える

ORGAN CRAFTと小島さんの付き合いは長い。店舗や個人宅を一緒に手がけることもあれば、音楽フェス<THE CAMP BOOK>では小島さんが装飾チームのメンバーだ。ORGAN CRAFT代表の渡會も信頼して仕事を頼めるパートナーだと言う。

―たいちゃんは家も建てるし、木工事の道理もわかってる。やりとりがスムーズだし、全体の段取りが組めるから俯瞰した視点で仕事してくれるよね。(渡會)

「店舗も個人宅もやりますし、庭木の手入みたいな、“いわゆる植木屋”の仕事もあれば、建物の設計からやることもあって。工事業者さん的には、設計から工事も含めて全体がわかることで助かる部分もあるのかなと思います」

―『わかってねえくせに口はさむな』みたいに、職人さんとぶつかることもないよね(渡會)

「職人さんの立場で考えますからね。あとは、建物の中からの視点で庭を作れるのも強みだと思います。例えばその場所に窓がある意味とかを汲み取るのは、植木だけやってたら難しかったです。逆に植木屋としては植物としてのあり方や防犯目的としての庭木だったりとかもの観点もあって。中と外、両方から考えられる庭師は多くはないのかなと思います」

―ちなみに、たいちゃんにとって住宅と店舗の魅力の違いって何だろう?(渡會)

「どっちも好きなんですよね。住宅は時間も労力もかかるけど、お客さんの理想の空間を作れるのがやりがいですね。店舗はたくさんの人が行き来する場所になるので、その様子を見られるのが嬉しいんですよね。人に喜んでもらうのが一番です。ありきたりな答えかもしれないですけど」

劣化よりも変化を楽しみたい

小島さんに、作り手としてのこだわりを聞いてみる。すると、「なるべく既製品を使わない」という答えが返ってきた。

「経年変化って言葉が好きなんです。新素材って呼ばれるような既製品を使うと、どうしても時間がたつと劣化してしまうんですよね。でも、例えば無垢の木なら、使ううちに味が出てくる。劣化じゃなくて変化というか。建物も庭も長く過ごす場所だから、時間とともに愛着を持ってもらえるものを作りたいんですよね」

―僕たちがリノベーションをやっているのも、根底に長く使ってほしいっていう思いがあって。そこは共通してるのかも。(渡會)

「ORGAN CRAFTさんとは、根っこの部分で同じものを感じてるのかな、と思いますね。僕は建て売りの建物の仕事って、あまりやらないんです。量産品の建物に僕の庭が入ってもあまり良くならないだろうし、そこに住むその人のためにイチから一緒に考えて作りたいって思うんですよね。その方が関わる人の熱量も高いし、胸を張って人に見せられるものが生まれますよね。お金だけを理由に仕事は受けないっていうか」

―ORGAN CRAFTでも「なんでそんな割のいい仕事受けないの?」って不思議に思われることもあるよ(笑)。でも、逆に「この仕事を俺たちがやる意味あるのかな?」ってのは、いつも考える。たいちゃんもそうだけど、この企画で会う人って、お金だけでは動かない人ばかりだね。(渡會)

最後に、小島さんのこれからについて聞いてみた。いつか、作りたい理想の作品は?

「僕は建築も庭もデザインもやるし、色々やりたいタイプです。でも全てが家1軒を作ることに集約されていくと思ってて。まずは、自分の事務所を作りたいですね。それこそ基礎から全部、自分の手で。やること多いですし、実際けっこう大変ですよね。本当にできんのかな?って。でも、難しい方が燃えるんですよね。壁にぶつかって必死に考えるときに成長できるっていうか。これからもいろいろ手を出し続けていきたいですね」

PHOTO:Takeshi Uematsu
TEXT:Masaya Yamawaka(1.3h/イッテンサンジカン)

小島 泰介

建築家/造園家/デザイナー

設計事務所、工務店での勤務を経て父が経営する造園会社に参画。
前職での現場作業補助、仕上の経験を経てモノづくりに傾倒。
現在は庭の製作や剪定をしつつ、建築、グラフィックなども手掛ける建築業界のマルチプレイヤー。

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