BACKSTORIES

家族を繋ぐ光とアートのリビング

オルガンクラフトが手掛ける工事の裏側を紹介するバックストーリーズ。今回は、家族4人神奈川県逗子市で暮らすHさん邸。2019年、Hさん一家が元々住んでいた自宅の建て直しを計画。建物そのものを解体~新築工事を行い、家族が理想とする暮らしのカタチがデザインされた家へと生まれ変わったHさん邸。ここでは、そんなHさんと担当した建築デザイナーの山下さんに話を伺った。

<Profile>
世帯主/Hさん。神奈川県出身。サラリーマン生活と並行してイラストレーターとして活動を開始、様々なアワードの受賞を経てデビュー。50~60年代のサーフやロックといったカウンターカルチャーから影響を受けた作風が特徴的。有名アパレルブランドとのコラボレーション作品なども話題となり、国内外問わず高い評価を得ている。

逗子の風に吹かれた生活スタイル

海や山といった自然に恵まれ、都会へのアクセスも便利。そんな神奈川県きっての人気スポット逗子市にHさん邸はある。普段、人気イラストレーターとして活動しているHさんは、自宅から徒歩30分の逗子海岸付近にアトリエを構え、日々創作活動に励んでいる。そして、波が上がればサーフィンを楽しむ。毎日、18時半頃に仕事を切り上げ、妻、そして7歳、4歳の娘が待つ家路へと向かう。

挽きたてのコーヒーのいい香りに包まれながら、完成したばかりのHさん宅を拝見。玄関を開けると、すぐに現れる広々としたリビングが一家団欒のスペース。大阪を拠点に展開する「TRUCK FURNITURE」によるオーダーメイドの大きなダイニングテーブルと「SEQUENCE Furniture Supply」がオーダーメイドによって仕上げたL字型ソファがゲストを迎えてくれる。2階へと続く階段の天井部には天窓があり、海街のフィーリングが漂う柔らかい採光をたっぷりと注いでくれる。2階には、Hさんの書斎、子供部屋が2つ、そしてウォークインクローゼット付きの寝室がある。Hさんの書斎には、さらに階段があり、現在は荷物の収納場所として使用しているロフトスペースへと続いている。

「2010年に中古物件の戸建てを購入し、自分たちで壁を塗ったり、好きな家具を置いたりして好みのテイストにして住んでいました。その後、2人の娘にも恵まれ、家族4人と犬で楽しくのんびりと過ごしていました。10年くらい住んでいたと思います」(Hさん)

2019年より開始したHさん邸の建て替え計画。以前住んでいた住居をすべて解体して、新築住居を建て直す大規模工事がオルガンクラフトによって行われた。

理想的な子育てを考慮した家づくり

「Hさんからのそんなご自宅を『すべて解体して、建て直したい』という新築工事の相談は、2019年にありました。その後、数か月に渡り丁寧に打ち合わせを重ね、着工に入りました。無事に完成してお引渡しが実現したのは、2021年の6月末でした」(建築デザイナー山下さん:以下Yさん)

Hさん夫婦が元々住んでいたのは、購入時の2010年で築13年経っていた建売の家で、当初はなに不自由なく暮らしていたという。やがて、2人の娘さんが生まれ成長していくにつれ、ある問題点に気づいたという。

「家の中の動線について、これはあまり良くないのかも、と思ったことがきっかけです。前の家も2階建ての作りになっていて、玄関を開けてすぐに廊下と階段があり、その奥が1階のリビングという間取りでした。このまま子供が思春期になったら、リビングにいる家族と顔を合わさずに、2階にある自分の部屋へ上がって行ってしまう可能性があり、これはまずい環境だと」(Hさん)

「トイレ、お風呂、洗面所へ行くには、玄関前の廊下を通過しないとアクセスできないという動線になっていました。きっと冬は寒いし、夏は暑いといった部分も課題に。さらに、キッチンが独立した場所にあり、お食事の準備中に、キッチンからリビングにいる小さいお子さんの様子が見えにくいといった、色々と子育てをするのにあまりいい環境ではないのでは?と判断し、今回すべて解体して新築に立て直すという提案をしました」(Yさん)

リビングが家族みんなのお気に入り

そんな課題を踏まえて設計したのは、玄関を開けるとすぐに1階はリビング、2階には4つの部屋という間取り。1階のリビングを広々と設定することによって、家族やゲストがいつでも集まって来られて、ゆったりと過ごせる。また、2階へ上がるのも、お風呂も、トイレも洗面所も、すべてリビングを通過してから。常に家族のそれぞれがちゃんと顔を合わせての生活に。そんな環境作りに徹した。

「完成した家は大満足な仕上がりでした。中でも家族みんなのお気に入りの場所はリビング。さらに奥行き1mにも及ぶ、大型のキッチン台にも大変満足しています。夫婦二人で立っても十分なスペースが確保できるし、後ろにあるカップボードまでの距離も広々としていて、子供たちが近くをウロウロしていても、全然気にならないくらい。妻が食事の準備をしている時に、キッチンの端で子供が宿題をやっているなんてことも」(Hさん)

Hさんの書斎スペースには、小さな洗面台も設置。アトリエ以外での作業時に、画材を洗浄する時などに使用する。

階段部の天井からは、たっぷりと光が注がれる。壁に飾ったアートが特別なギャラリー空間へと導いてくれる。

光とアートに包まれた家族の肖像

「Hさんは、元々クリエイティブな感性をお持ちで、ご自身で色々とDIYするなど住み方やインテリアのアレンジができる人なので、細部に至るまでの提案は余計かなと。ただ、階段部分の天井に設置した窓と書斎に設置した大きな窓は、私からの提案でした。2階の廊下が暗くなるのは、環境としてもよくないし、いい光がたくさん入って来るので、それを活かしたいという提案は、快く承諾してくださいました」(Yさん)

ご自身が愛して止まないアメリカンヴィンテージの家具をはじめ、ハンス・ウェグナーのソファといった北欧家具がセンス良く並ぶ。そんな空間を彩るのが世界各国で活躍するアーティストの作品たち。ほとんどがHさんの友人であるアーティストによるものだとか。

「海外にも友人であるアーティストが何人かいます。最近はコロナの影響もあり、あまり日本へ来られない状況でありますが、以前は来日する度に、我が家へ寄ってくれて、一緒にサーフィンをしたり、温泉へ行ったり、うちに泊まったり、そんな時間を子供たちも楽しみにしていて。来日して、会うたびに作品をプレゼントしてくれるなど、壁に飾られているアートの多くは、友人からいただいたものです。まだまだ、たくさんあるのでちゃんと額装して、飾っていきたいです」(Hさん)

現在は、娘さんたちの強い希望で4人家族に2匹の猫が増えた。家族のみんなが、リビングで一緒にくつろげる家。天窓からたっぷりと差し込んでくる光がアートの魅力をさらに引き出す。2021年6月に完成したHさん邸は、まさに家族の幸せと素敵な未来が、一つの箱の中でセンス良くデザインされている作品かのようだった。

Photo&Text:Daisuke Udagawa(M-3)

PLAN