モデルのキャリアは15年以上。経営するモデル事務所も3年目を迎える。それだけを聞けば華やかな成功者に見えるかもしれない。でもShogoは「表に立つこと自体が心地いいわけじゃない」と言う。子どもの頃はサッカーひと筋で、本気で日本一を目指した。ポジションはゴールキーパーだった。「今でも、みんなの後ろ姿を見ている方が落ち着くんです」。
「サッカーを諦めてモデルを始めても、どこか裏方気質で。モデルとして自分が服や物を紹介することで知られるきっかけになったり、作り手の人たちが喜んでくれたりするのが嬉しくて。どんな世界にもすごい努力とか才能ってあって、でも知られてない人はたくさんいて。そういう人たちを応援したくて、モデルの仕事を続けてきた気がします」
震災後はボランティアのため東北に9年間通い続けた。知的障がいのある子どもたちにファッションの楽しさを伝えるため走り回ってもいた。最近は農の世界に心を掴まれて、生産者を訪ね土に向き合っている。そして、この数年Shogoが夢中なもののひとつに日本酒がある。
「体育大生の頃は、日本酒って飲み会の罰ゲームみたいな存在で。でも、あるとき美味しい日本酒に出会ってイメージが変わって、逆にのめり込んで。日本酒って、調べるほど奥深いストーリーがあって面白いんです。作り手の方の技術って本当に神業だと思うし、受け継がれた歴史とか作り手の努力が秘められているっていうか。それを伝えたくて、友人たちに酒を振舞うようになったんです」
今回ORGAN CRAFTにオーダーしたのは、日本酒を振舞うためのモバイル屋台。白木にあしらった日本的な意匠にもこだわり、提灯やのれんもデザイナーに特注した。ちょっと本格的、でも堅苦しくなく、自然に人が集まる設計。畳めば箱に収まり、キャリーで好きな場所へ運ぶこともできる。名前は<YOPPARAdox(ヨッパラドックス)>。酔っ払いと、矛盾を意味するパラドックスをかけたネーミングだという。
「みんなが楽しそうに酒を飲んで、それを後ろから見てる僕が誰よりも楽しいっていう、矛盾構造っていうか。最初に振る舞い酒を始めたのが沖縄にある友人の店の軒先で、いつか沖縄にも持って行きたいんですよね。せっかくなんで、飲んでください。今日は長野にある、同世代の方が作っている酒を揃えました」
作り手のことになると目が輝きだし、話が止まらなくなる。Shogoはいつも誰かのために動いている。見返りは求めず、自分の時間と労力を惜しみなくつぎ込む。相手に理解されないこともある。泥臭いというか、不器用にさえ見える。そこに自分の欲はないのだろうか?
「昔はあったんですよ。モデルとして広い舞台で勝負したくて海外に出て、でも全然ダメで打ちのめされて。サッカーもモデルも一回燃え尽きるまでやって……」
そして、しばらく黙り込んでしまう。自分のことになると、急に口下手になる。それだけで答えになっている気がした。
「感動するくらい優しい人や努力している人っていて、そういう姿を見ると泣きそうになるし、その人のために何かしたいって思います。日本酒の作り手や農家さんや、事務所のモデルたちも同じで、みんな尊敬してるし、そういう人たちが好きなことに夢中になれる環境を作りたいんです。どうしても人のことになっちゃいますけど。でも、みんなが喜んでいる瞬間以上に気持ちいいことって、やっぱりないかもしれないです」
Text:Masaya Yamawaka(1.3h/イッテンサンジカン)
Photo:Fumihiko Ikemoto(PYRITE FILM)