“CRAFTSMAN SHIP”
3回目を数える今回の“CRAFTSMANSHIP”は、大阪をベースに活動する「THE UNION」の長・牧田耕平さんがゲスト。元アパレル出身という施工集団”ORGAN CRAFT”を率いる渡會竜也と旧知の仲でもある。自身が手がける“その生地でその構築”をコンセプトとする「THE FABRIC」を筆頭に、それぞれのプロフェッショナルがタクトを振るう計7ブランドをまとめる氏。“アパレルエンターテイナー”を自称する牧田さんが考える“CRAFTSMANSHIP”とは?
渡會:大阪をベースにすることで物作りに反映されることはありますか?
牧田:この世界のトップシーンは東京にあるのは今でもそう思っています。でも東京だとどんな事もサイクルが早くて、周りが見えにくい部分がありますよね。大阪にいるからこそ、地方に目を向けられるのが特色だと思っています。地方でなぜ売れてるのか? というのをちゃんと探るのがTHE UNION。どの地方にもフレキシブルに足を運んで受注会を行います。
渡會:そこでもユーザーの意見をヒアリングするんですね?
牧田:そうなんですよ。THE UNIONが大切にする“愛”を表現する一つの形でもあるんです。実はそこで面白い仕事の話も生まれたんですよ。
渡會:洋服以外の仕事ですか?
牧田:きっかけは洋服かな。受注会に来てくれたお客さんがカニ漁の漁師さんで、「出航祭の記念Tシャツ作らせて欲しい」と、その場でコラボレーションが生まれたんですよ。それを機に次は「カニを売らせてよ」って話になって(笑)。
渡會:カニを売るんですか!?
牧田:とりあえず10杯だけですけどね。水揚げされたばかりの上質なカニを生の状態で届けるんですけど、それだけじゃウチらしくないから、身をほじくるフォークみたいなのにTHEの刻印を入れ、オリジナルのタオルを同封して販売することになりました。
渡會:僕もすごく欲しいです。
牧田:めちゃくちゃ美味いカニなんでおすすめですよ。漁師さんも喜ぶし、買ってくれて美味しいカニを食べるお客さんも喜ぶし、みんながWin-Winの関係になってくれるのが一番ですね。作り手とユーザーの間を結ぶ立ち位置を少しずつ続けていこうかなと思っています。
渡會:カニの販売も愛があってのプロジェクトなんですね。
牧田:僕自身が手がけるものは、どんなプロジェクトに関しても愛情を注いでいきたいなと。もちろん、右から左へと簡単に物事が進まないことは理解しているつもりです。でも、僕がおすすめするものなら「間違いない」と喜んでもらえるのが一番。僕自身がいま40歳オーバーなので、これからの20年は色々なものを繋げる仕事ができたらなと思っています。
渡會:カニのほかにも色々な食べ物を扱う予定ですか?(牧田さんの机に置かれた米袋を見つけて)
牧田:これですか。友達が作っているオーガニックな製法で栽培された北海道のお米で、これも販売する予定です。このお米に限らず、有機栽培のトマトも。オーガニックの農作物って本当に美味いんですよね。その味を知ってもらいたくて。
渡會:カニの漁師さんとの出会いがきっかけで食を扱うようになったんですか?
牧田:実は元々考えていて。昔から地元(大阪市東住吉区)のソースやポン酢を全国の友人に「美味いから使ってみて」と送っていて、そのお礼として色々なものが届いていたんですよ。「日本各地にある絶品の食を広めたいな」と、自然に思うようになって。
渡會:もはやTHE UNIONはアパレルを中心とした商店ですよね。それこそがアパレルエンターテイナーの本質ですか?
牧田:本当にその通り。ここからのTHE UNIONは商店にシフトしていこうかなと。僕が思ういいものをちゃんと並べていく感じですかね。
渡會:本当にいいものであれば、世代関係なくフックしますもんね。
牧田:伝える側の人間として、やっぱり多くの人に知ってもらいたいという気持ちが強いんですよ。なので利益を極限まで削って、色々なものを提案していきたいですね。おすそ分けみたいな感覚です。生産者の商売が上手くいけばTHE UNIONの服を買ってもらえばいいし、ユーザーもTHE UNIONと永く付き合っていければいいし、すべてTHEに返ってきてもらえるだけで十分です。
渡會:最後に耕平さんにとって“CRAFTSMANSHIP”とは?
牧田:何度も言うようですけどやっぱり“愛”ですね。洋服にしても今後販売する食にしても、どんな人がどう心地よく利用してもらえる、すべての人がTHE UNIONを通してどう笑顔になってもらえるか。一つひとつのストーリーがしっかりと奏で出せたら最高です。単に物を売って終わりではなく、人と人との付き合いを大事にしているのも“愛”を選んだ理由です。
TEXT:Shohei Kuroda
Photo:Shimpei hanawa