STORIES

ディレクター・デザイナー・施工管理・施主へのインタビューで、
家づくりを基点としたストーリーを紐解く。

CASE2:NISHI-TOKYO
バランスを保ちつつ、新旧を組み合わせる。
あらゆる要素を引き立てる、無垢な空間に。





「割と昔から、家のことがほかのことよりも優先度が高いかも」と語る施主は、今回のリノベにおいても、要所で自分の意思を我々に伝えてくれた。展示ごとにテイストちがいのアートを受け入れるギャラリーのように、セレクトする家具や雑貨などを引き立てることのできる、偶発性をも許容する空間づくりを心掛けた。

既存を活かしながら、玄関からリビングまでシームレスにつなぐ

41㎡弱の空間に拡がりを持たせるべく、色味や高さからアプローチした。全体的に白を基調とし、リビングドアは、高さのあるガラス建具を採用。玄関からリビング奥まで見渡せる設計でゆとりを演出した。トイレや脱衣スペースなどの必要な扉以外は、隔たりをなくし、よりシームレスな空間を意識した。アパレルの仕事に就き、洋服を多く所有する施主の要望通り、洋室と廊下の壁を抜いて新たに設けたウォークインクローゼットが動線と収納のバランスを整えた。




新旧がマッチする、空間に合わせた素材の輪郭

素材については、各箇所に合わせて選定した。リビングにおいては、“天井は躯体に白塗装、壁はクロス”をベースとしつつも、一部の梁などは躯体をそのまま露出させ、陰影が生まれる構成とした。こちらの棲み分けは、解体後に顔を出した躯体の表情を見てからの判断だった。床材に採用したフロアタイルは何パターンかで悩んだが、陽の射し込み具合なども考慮し、暗めではなく、明るめの印象のものを採用した。また、洗面台は既存の脱衣スペースがコンパクトだったこともあり、敢えて廊下側へ独立させ、この部屋の顔となるスペースが生まれた。洗面背面のタイルについても、ざらつきの有無や光に当たった時の質感などを軸に悩んだが、最終的にサイズや空気感も含めピッタリなものに出会った。











インテリアで自由に遊べている。

そう施主が語るように、ベッドやソファなどは当初イメージしていた通り配置し、他の雑貨やインテリアなどに関しては、そのハコを活かし、自由に組み合わせできているという。
決してひとつのパターンで完結するわけではなく、気分に合わせてトランスフォームできる空間へ。ここからは、施主の審美眼が細部に宿る。




Q.家に対する考え方や、ルーツなどはありますか?

結構前から、将来の夢は「家を買う」というくらい、家の重要度は高い方でした。子供の頃から家に対しては、安心感を抱いていたし、今でも実家の“いつでも帰れる場所”という感覚は他には代えられないものだと思います。無骨なものも好きですが、どこかにあたたかみや柔らかさをエッセンスとして加えることは意識していると思います。

Q.今回、家づくりのインスピレーションはどこからくるものでしたか?

漠然としたイメージやキーワードは自分の中であったので、instagramなどでざっくり保存したものの中で、共通点を分析していました。もはや仕事みたいな感覚でした笑。戸建て・マンションにかかわらず、リノベした友人宅や海外のものも見てました。もちろん日本の事例の方が、参考になりますが、海外のものは要素を吸い取るのに最適でした。あとは、メーカーの施工事例も見ましたね。結構リアルな風合いをキャッチできます。

Q.家具やインテリアのセレクトで重きに置いている要素はどんなところですか?

洋服や性格も割と中性的な要素が好きで、インテリアにおいても“あいまいな感じ”がグッときます。ブランドはもちろん気にしますが、そこまで拘りはなく、部屋全体のバランスにマッチする形状や色味にセレクトの比重がある感じですかね。少し癖のある植物やアートも取り入れてます。

Q.解体後・中間・完了時など複数回現地確認のタイミングがあったと思いますが、徐々に出来上がる姿はいかがでしたか?

過程を見れる楽しさがありました。一方で、着工したくらいでちょうど体調を崩したこともり、精神的に追い詰められた時期や、自分の意思や決定力の大切さを痛感したタイミングもありました。出来上がったときは、まず終わった…という解放感が、そのあと家具などを入れていく過程で、達成感や喜びが徐々に沸き上がる感じでした。

Q.新居での暮らしはどうですか?

床材・洗面のタイルや、ガラス建具など悩んで決めた部分に対して満足感や愛着が湧いています。全体が気に入っているからこそ、打ち合わせ時にはフォーカスしていなかった箇所や、キッチンなど既存で残した部分が少しづつ気になりだしてきました笑。こうやって、リノベや家づくりの旅は続くのかぁと感じています。

Q.次回リノベをするとしたら、今回の経験をどう活かしますか?

次やるとしたら、今回の経験を活かして、全体の軸はしっかりと持ちつつ、エリアごとのイメージもより突き詰めたいと思います。自分の感性はもちろん大事にしたいですが、自分と真逆のテイストを好む人のアドバイスとかも取り入れてみたいです。1回リノベを経験して、器が大きくなったかもしれません笑。

Planning & Design:Kamiyama , Kawasaki
Location:NISHI-TOKYO
Area:41.89㎡
text/photo (shot on iphone):ORGAN CRAFT