JOURNAL

SHIDO AKAMA

後編

今になって見えてきた、走り続けることの大切さ

個人の独自性や創造性が反映され、唯一無二の作品に価値を見出せる書道の世界。赤間紫動さんは文字を表現するだけに留まらず、デザインの一部として企業やアーティストと作品を創り出すニュータイプの“書芸家”だ。後編では、赤間さんの「書」のスタイル、実績、作品を手掛ける上で大切にしていることなどをお伺いする。

これまでの慣習や常識に左右されないこと

─前編の最後では俳優・村上淳(以下、ムラジュン)さんのディレクションするアパレルブランド「Shantii」のデザインを経て軌道に乗り始めたと聞きました。その理由をどう自己分析しますか?

赤間:ムラジュンさんの影響力と知名度で名前が一気に表に出たのももちろん影響していると思うけど、自分の書き手としてのスタイルがこれまでの書道家といわれる方々と違っていたのはあるかもしれないですね。

─というと?

赤間:これまで「書道家」というと、漢字やひらがなを書いてる人を想像するのが大半だと思います。僕は、英語も書くし墨汁を使って抽象的な柄を作ることもある。だから頼む側からしたら赤間という人間が書き起こす“デザイン”として 捉えてもらえているのかなと思っています。

─確かに赤間さんの文字作品はロゴのような見え方だなと感じました。

赤間:自分が書く文字は行書スタイルで、流れるような筆脈を作るように意識しています。文字の配置やバランスをトータルで見たうえで、書いたものがどうアレンジされて世に出るのかを考えて書いています。そうすれば企業の方も「寄り添って制作物を一緒に作ってくれそうだ」と安心してくれるものかなって。そこまでクライアントと伴走する書道家の方ってあんまりいないと思うから(笑)、もしかしたらそれが差別化になっていたのかもなと。だからこそ肩書きは「書芸家」と名乗っています。

─他にはどんなオファーがありますか?

 赤間:パフォーマンスオファーが多いですね。イベントでライブパフォーマンスやってほしい、など。そういった類のものはお断りさせていただいてるんですけどね。というのも、単純に人前で書くことが苦手なのもありますが、自分の仕事のスタイルとしては作品って形で世に出したいので。

 グローバルブランドからの需要

─G-SHOCKやアシックスなど、グローバル展開されているクライアントさんとのお仕事も多くされているイメージがあります。

赤間:そうですね。海外ブランドの日本法人からお仕事をいただくこともあるのですが、日本での独自企画、コラボものなど展開する際に起用いただくことが多いです。書道はアジア圏の芸術だから日本らしさを出す手法としては最適な上に僕が英語などを書けるので和洋折衷な仕上がりになるのではないか、と思ってご依頼される方もいらっしゃるようです。

─どんなイメージを持ってお仕事にあたっているんですか?

赤間:お仕事のオファーをいただいた時に自分の中でイメージが湧くかどうかもお仕事を請けるか請けないかの判断基準になっている部分もありますが、感覚的に書いているところもあります。

ストリートブランドやカルチャーが昔から好きなので、そういった類のものは自然とイメージが湧きやすいかな。

─参考にしていたり影響を受けているアーティストさんはいますか?

赤間:ジャクソン・ポロックというアメリカの画家がいて、抽象的表現をスタイルとしていたんですよ。僕が抽象的な柄を作るようになったのは彼の画風に影響を少し受けていると思っています。墨の飛沫も1つのデザインだと考えていて、たとえ文字での作品だとしても意識して取り入れています。

書道のイメージをアップデートしていきたい

 

 ─これからの書道業界をこうしていきたい、などの目標はありますか。

赤間:一般の方から見た書道の世界って少し古くさいイメージがあるなって思っていて。袴履いて「先生」とか呼ばれてるような方が連想されるじゃないですか。少し固いなと感じています。

─古来から伝わるものですし、そんなイメージを持っていました。

赤間:書道とか茶道などは伝統文化の一部とされていると感じてはいますが、アートとしては認識されづらいところはあるなって。だからアートや作品として用いられる技法として認知が広がっていけば日本だけでなく世界でも書道界全体が新しい見られ方になるのではないでしょうか。裾野をもっと広げていくことが自分も貢献できる目標ですかね。

─個人としての目標は?

 赤間:大河ドラマの題字を書いてみたいですね。理由は単純で、若い子からおじいちゃんおばあちゃんまで誰でも知ってるから(笑)書道界でも大河をやったってだけで箔が付くと思うし、今の大目標の一つです。

高揚する瞬間とモットー

─どんな時が「この仕事をやってて良かった」と思う瞬間ですか。

赤間:書いたものを納品した後に何かしらの制作物として落としこみされ、仕上がりが形になって出てくるとやって良かったと思います。書いてる時は指名でオファーもらっているわけだし、自分の名前も表に出るので変なものは書けないってプレッシャーと戦いながら神経使ってるので楽しさはあまりないかもしれないです。

─最後に赤間さんにとってのクラフトマンシップとは。

赤間:基本的なことですし当たり前ですが諦めずに書きながらアウトプットをし続けることですね。結構いいところまでいってるのに辞めちゃう人も多いんですよ。僕も修行期間を含めて2003年から書き続けて大きな転機が来たのが2019年。だからこれからも日々書き続けて大きな目標に挑んでいきます。

 

INTERVIEW & TEXT:Mitsuaki Furugori
PHOTO:Fumihiko Ikemoto(PYRITE FILM)

赤間紫動

https://www.instagram.com/shido_ak/

1975年東京都生まれ。
幼少期より書を学び、2003年より書芸家として活動開始。書道技法と現代デザインを融合した躍動感のある独自スタイルが国内外で高く評価され、ファッションブランドを中心にアパレル等のコラボレーション商品をリリース。広告・カタログ・ロゴデザインなど数多く手掛けている。

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