JOURNAL

HIDEYUKI AIZAWA

後編

自分だけができることが、価値になる

前回訪ねた、厚木でゴシック・バロック装飾を手がけるウッドカーバーの松本さんが、「厚木の仲間に、木のスペシャリストがいる」と教えてくれた。内装施工を手がけるORGAN CRAFTチーム、仕事柄木材には目が無い。松本さんの案内で、古材の加工販売を行う「remark」に向かった。

厚木を拠点に、古材の加工販売を行う「remark」の代表相澤さん。古材を扱って15年以上、その仕事は全国各地に広がっている。相澤さんにとって、古材の魅力ってなんだろう? そう聞くと、相澤さんは「けっこう辛い仕事なんですよ」と笑う。

 

「クライアントやデザイナーのこだわりがあるから、いろんな要望が出てきますよね。希望に応えていいものを作りたい一方で、安全面や守るべきラインもありますし、常に模索の連続。施工や建築って、明確な答えがわからない中で進んでいくわけですから。でも、『できない』じゃなくて、じゃあ何ができるのかみんなで答えを探っていくんです。大変だけど、それが面白さでもあるのかな」

「本当にいろんな依頼がありますよ。この間は500年前の杉の一枚板のテーブルを作って、11階のスイートルームに入れるという案件があったんです」

 

「500年前の杉材ですか。それはしびれますね。僕も木のオタクなんで、刃を入れるのを想像すると震えます(笑)」(渡會)

 

「岐阜かどこかの銘木屋が代々受け継いできた木ということですよ。神社の御神木クラスですよね。その500年の杉で天板を作って、建設中にクレーンで11階に運び込む。それから屋根を建設するから『1ヶ月以上耐えられる梱包をしてほしい』と。天板作るより梱包の方が大変でしたよ(笑)」

「いろんな難題が来るし、それに応えられるように、場所も在庫も持っていないといけない。古材は供給の難しさもあるし、リスキーな商売ですよ。でも、誰もできないことをやるのが勝機じゃないですか。僕だけできるんだ、っていうのが一番気持ちいいから。シンジ(松本さん)と一緒に作るのも、そういうことですよね。違うスキルを持つ仲間とコラボすることで、さらに僕たち特有のものが生まれるから」

 

 

アイデアは、日々の遊びの中から生まれる

前回のJOURNALで取材した松本さんは、ウッドカービングのアーティストであり、レザーの加工職人でもある。松本さんも「木もレザーも生き物ですし、1つ1つ個性があるので共通する部分がある」と言う。

「シンジ(松本さん)には、うちで作った古材のフレームに彫刻してもらったり、レザーをからめて一緒に家具を作ったりもします。彼は器用だから大抵のことができちゃうんですよ。以前は真鍮の黒染めをしてもらったこともあります。仲間内で作れるのは大きいですね。感覚的にも通じてるし、普段からよく飲みにいっては、いろんな話をしてる」

「うちが目指しているのもそういう部分なんです。人伝いで繋がっていって、みんながコラボレーションして一緒にものを作る。信頼している人が紹介してくれる方は間違いがないですから」(渡會)

 

「仲間と遊びでいろいろやってるうちに、世に出るものが生まれると思うし、大切ですよね。僕らの厚木の仲間には鉄屋もいますし、チームで動けばいろいろなことができちゃうんですよね」

例えば工場内の自販機も、そんな遊びから生まれたもののひとつ。元はピカピカの最新式の自販機に、見事なエイジング加工がされている。他にも、木工旋盤(※1)でお皿を作ってみたり、ボールペン作ったり。ビジネスになるかどうかは関係なく、常に面白いものを探しては試しているという。
※1:木材加工において木材を回転させる為の機械。

「シンジのように遊びながらものを作れる仲間がいて、お客さんが僕たちの仕事を面白がってくれる。それが広がっていくのが嬉しいし、完成したものをみんな同じ目線で喜べるのが嬉しいんですよね」

 

「僕たちもメインは内装施工ですが、自分たちでTHE CAMP BOOKという野外フェスなどもやっています。いろんなスキルをもった仲間が繋がって、みんなで面白いものを生み出していくのは、目指すところで」(渡會)

「僕も人が好きだし、顔見て商売するのが好きなんですよね。居心地のいい関係性の中でものをつくっていきたいし、期待に応える仕事をし続けないと、そういう場には呼んでもらえない。プレッシャーもあるけど、それがいいんでしょうね、きっと」

 

 

作り手としてのこだわりは「梱包」

相澤さんにとってのクラフトマンシップとは? そんな質問をぶつけると、意外な答えが帰ってきた。

「僕自身のこだわりというと、実は『梱包』なんです。一個一個ラップで巻いて、塗装品だと化粧合わせして、段ボールで巻いて、雨だったら最後プチプチ巻いてとか」

「古材屋さんでここまできれいに梱包されているのって、他にないですよね。でもどうして梱包にまで、ここまでこだわるんですか?」(渡會)

「僕たちが大切に作ったものなので、受け取る相手にもそれなりのものが入ってると感じてほしいんです。古材が雑な梱包で届けば『汚い木だな』と見られてしまうかもしれない。でも、手間をかけて丁寧に梱包されていれば、受け取った施工屋さんも、大切に扱ってくれるかもしれない」

「最終的に大切なのはお客さんの満足です。でも、梱包ひとつで僕たちの木材を受け取る施工屋さんに、思いが伝わるかもしれない。そういったささやかなこだわりが、最後の仕上がりまで繋がっていくかもしれません。妥協しない、というとカッコよすぎるかもしれないけど、自分の中で恥ずかしくないものを出したいというのは、最後の出荷の段階まで常にあるんです」

 

ORGAN CRAFT 代表 渡會

古材を使い丁寧に加工し、丁寧に売る。現場の職人さんたちは丁寧に扱い、丁寧に仕上げる。改めてそういった言葉を聞いて、人としてのやり取りや、ものづくりの原点を思い返すことができた。まるでヴィンテージの古着を見つけてきていいコンディションで送り出してあげるのと同じように、いい素材は古くなっても良いままで、育て上げることの重要性を思いながら僕はremarkを後にした。

 

TEXT:Masaya Yamawaka
Photo:Fumihiko Ikemoto(PYRITE FILM)

相澤 英之

http://www.remark-remark.com/

大学卒業後、会社員として営業職を経験、その後刃物職人として修行を積む。地元の神奈川県厚木市でremarkを立ちあげ、高品質な古材の輸入・加工・販売や、看板デザイン ペイント、内装などの事業を行う。古材を使った主な仕事に、渋谷のホテル「TRUNK HOTEL」、BEAMS、patagoniaなどの店舗内装など。

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