JOURNAL

HIDEYUKI AIZAWA

前編

100年以上前の木材を蘇らせるクラフトマン

前回訪ねた、厚木でゴシック・バロック装飾を手がけるウッドカーバーの松本さんが、「厚木の仲間に、木のスペシャリストがいる」と教えてくれた。内装施工を手がけるORGAN CRAFTチーム、仕事柄木材には目が無い。松本さんの案内で、古材の加工販売を行う「remark」に向かった。

古材を使って店舗や商業施設の内装を手がける

エイジングが効いた巨大な建材や、古い1枚板。広い敷地内に、いくつもの建物が並び、中にはさまざまな木材が所狭しと並ぶ。

「うちは100 年以上前など古い木材の加工や販売を中心に行なっています。釘を抜いたり洗ったりして木材に加工して販売することもあるし、施工業者やデザイナーなどとチームを組んで、店舗や商業施設の内装を担当したり、いろいろですね。テーブルとか家具も作るし、シンジ(松本さん)と一緒に古材で家具や額を作ったりもしています」

そう話すのは、remarkの代表の相澤さん。厚木を拠点に20年近く、古材を扱っている。

相澤さんが代表を務める「remark」の仕事は幅広い。例えば古材を使って渋谷のTRUNK(HOTEL)の内装を仕上げたり、BEAMSやpatagoniaといったアパレルやハンバーガースタンドのSHAKE SHACKの店舗内装を手がけたりと、あげればキリがない。

「商業施設や、多店舗展開のアパレルやレストランが多いですね。まずうちの古材で東京のフラッグシップを作り、それをモデルケースに全国の店舗に広げていく流れ。他にも、戸越銀座駅の駅舎を建て替えるときに、80年前に建てられた木造の駅舎で使われていた木がうちに来て、それで新駅の看板を作ったこともあります」

「古材を扱うようになったのは、どういった経緯なんですか?」(渡會)

「実は、僕はもともと職人ではないんです。大学を出て、最初は企業で営業をやっていたんですよ。それから26歳で実家の厚木に帰ってきたんですが、実家で機械工具屋をやる親父に『一回職人になってこい』と言われ、浜松の刃物屋に修行に行きました」

「それから厚木の実家で刃物職人として働きはじめました。なので、最初は木ではなく刃物からのスタート。古材を扱いはじめたのは2003年頃。たまたま依頼があってやってみようかと。僕はもともとが営業なのもあって、新しいことに挑戦するのは抵抗がないんですよね。機械工具を扱うので、木材も加工できるということで、次第に木材加工にシフトしていきました」

 

施工の現場までイメージして古材を加工する

古材を扱うようになってから事業の規模も広がり、工場も拡張されていった。工場内にはドアや壁のひとつひとつが味のある古材で作られていることに気がつく。何気なく置いてある椅子もオリジナルの作品。打ち合わせルームは、古材の板を張り込んだ空間になっている。空間のいたるところまで、プロの遊び心を感じさせる。

「古材は年代も木材も様々です。もともとは釘が入ってるし砂もかんでいるので、まずは洗って、それから釘を抜いて、削って。商業施設に使うことも多いので、不燃処理も必要です。砂だらけ釘だらけで売られている古材もあるのですが、僕たちは建材として使える状態にして出しますね。現場の方の苦労はわかるので、施工や実際の作業のシーンまで考えています」

「そういった意識の方は、施工業者としては本当にありがたいですね。古材の仕入れは主に解体屋からですか?」(渡會)

「ですね。日本でもアメリカでも解体屋の知り合いがいて、そういうところから。解体屋の友達に『四寸角探してるお客さんいるんだよ』とか聞いたりしながら。

四寸角というのは建材張の規格のひとつで、昔ながらの漆喰壁に適した太い木材。現代の住宅ほとんどが三寸角が使われているため、四寸角の古材は貴重だ。

「今は、なかなか四寸角は出ないですよね。そうやってお客さんが求める古材を探したりするんですね」(渡會)

「もちろん頼まれたものを探すこともありますけど、大切なのはお客さんのイメージの先にある別の選択肢を提案することだと思うんですよね。僕たちはプロだから、相手が好きな古材はこれだろうとかわかりますよ。でも、求められたものだけ出していたら、相手の成長や発見につながらない。想像の先にある選択肢も見せたいんですよね」

 

木は死なない。時間によって変化するだけ。

内装施工を手がけるORGAN CRAFTでも、古材を扱う機会は少なくない。例えば古い足場板を賃貸の床に貼るのは、人気の施工のひとつ。1枚ずつ違う風合いと経年変化が楽しめるし、アップサイクルが注目される中でニーズも高まっている。

「足場板も、昔は捨てられたものだけど、今は逆に新品より高くなったりしてますね。最近はいわゆる古材っぽいものだけじゃなくて、加工してモダンな印象に仕上げたものもニーズがあります。古材が求められるシーンは増えているのかもしれないですね」

では、相澤さんにとって古材の魅力とは何なのだろう?

「ひとつひとつ個性が違うし、ストーリーがあるんですよね。古材の状態を見れば、どんな建物でどんな風に使われてきたのか想像できるし、そこにはこの前も500年前の古い杉の1枚板のテーブルをホテルに納めたりしましたけど、それだけの歴史を持つわけだから、やっぱり木そのものに力があります。2000年前の屋久杉の天板とか見ると、すごいですよ。木ってどれだけ古くても生きてるから」

「木材は100年200年経って変化して味は出るけど、死ぬわけじゃないし、だから建材になっても動きますよね。腐らない限りは生きてるし、ずっと使えるんですよね。無垢の木だと多少表面が痛んでしまったとしても、削れば再利用できる。ちゃんとメンテナンスしていけば、いつまでも使い続けられる」

「レザーとかも同じですよね。表面だけ塗ったものだと削れないけど、ちゃんと芯通ししてあれば長く使える」(渡會)

「やっぱり、そういったいい経年変化が楽しめるものって、魅力的なんですよね」

後編では、厚木の仲間との活動と、相澤さんのクラフトマンシップについて聞く。

TEXT:Masaya Yamawaka
Photo:Fumihiko Ikemoto(PYRITE FILM)

相澤 英之

http://www.remark-remark.com/

大学卒業後、会社員として営業職を経験、その後刃物職人として修行を積む。地元の神奈川県厚木市でremarkを立ちあげ、高品質な古材の輸入・加工・販売や、看板デザイン ペイント、内装などの事業を行う。古材を使った主な仕事に、渋谷のホテル「TRUNK HOTEL」、BEAMS、patagoniaなどの店舗内装など。