JOURNAL

CRAFTSMAN SHIP | SHIN KATAOKA2


“CRAFTSMAN SHIP”
人気バンド「片想い」のボーカルとして活躍している片岡シンさん。バンドの活動と並行して、終戦翌年から営業している墨田区の老舗銭湯「御谷湯(みこくゆ)」の運営もされているということで、お話を伺いました。お風呂屋さんと音楽家という、一見関係性を見出すことができない2つに共通するCRAFTSMAN SHIPとは? 常に楽しませることを考え、独特な着眼点から編み出された思いを届ける。そのためには、複数の職人の支えがあってこそ実現できる。今回、それを確信することができました。

渡會:片岡さんは銭湯の運営と並行して、バンド「片想い」のメンバーとしても活動されていますが、音楽活動と銭湯運営を並行する難しさや悩みとかありますか?
片岡:難しさと言うか…例えば去年なんですけど、ついさっきまで地方のロックフェスのステージにいたのに、ライブが終わったらすぐに飛行機で帰って、番台に座るっていう。家族経営ゆえの忙しさとそのギャップに驚いています。

渡會:確かにギャップがすごいですね(笑)。
片岡:すごいですよね。他の日にも、スタジオコーストの大きなステージでライブをして来たのに、一度銭湯に戻って一人静かに番台に座り、またライブ会場に戻るなんてこともありました。そんな事したの、多分僕しかいないと思います(笑)。落ち着いた時にふと、この感じはなんだろうって。静と動とでも言うんでしょうか。ライブのお客さんが銭湯に来てくれることもあるんですけども、あまりにテンションが違いすぎて声をかけられなかったって、後日伝えられました。

渡會:とても同じ人の生活とは思えないですね! そんな中で音楽と銭湯、この2つに何か共通点はありましたか?
片岡:共通点とはまた違うのかもしれないけれど、僕たちがやっているバンドは酒や風呂のような存在になりたいって思っていて。

渡會:それは銭湯をやる前から?
片岡:はい、銭湯をやる前から思っていたので、今はとても不思議な感覚です。

渡會:とてもユニークな考え方ですね。曲調や、タイトルに独自性があるのにどこか親しみやすさを感じるのは、暮らしに近い存在への意識があるからなんですね。ライブでも何かこだわっている点はあるんですか?
片岡:とにかくおじさんだと思われないように頑張って若く見せてます(笑)。今41歳なんですけど、同世代のミュージシャンってほとんど大御所ですからね。ライブで僕らの出る時間帯はほとんど若手なんで、そこで「おっさんが出て来た!」って思われないようにしてます(笑)。

渡會:やはり目の付け所が独特で面白いですね。6月に弊社主催の野外フェス「THE CAMP BOOK」に出演していただきますが、どのようなライブになりそうですか?フェスだと何か気分が変わったりするんですかね?
片岡:フェスってお客さんが常に楽しそうなんですよね。なので、自分達が盛り上げるというよりも、お客さんが作る場の盛り上がりにつられて楽しくなって、頑張ってしまうところはあります。普段のライブとは気分が全然違いますし、特別な感じがして僕は好きですね。

渡會:「THE CAMP BOOK」の会場には神の湯というお風呂があるんで、ぜひ入っていただいて感想もお聞きしたいですね。まさかのコラボ番台とか(笑)。フェスを主催するにあたって、場を作るには沢山の人のご協力があるからこそ開催できているとひしひしと感じています。リニューアルの際は職人さんとのコミュニケーションも多かったと思いますが、ミュージシャンと職人さんってどんな違いがあると感じますか?
片岡:僕たちの音楽って、ライブで荒くてもテンションで乗り切れたりするんです。職人さんの仕事はレコーディングをしている時に近くて、荒さとかテンションで押し切らないっていう。ちゃんとやるべきことを、つつがなく、楽せず、抜け目なくやっていると感じましたね。

渡會:そんな職人さんとミュージシャンで、クラフトマンシップという点で共通していると思った部分はありましたか?
片岡:建物を建てるというのは、アルバムを作る作業に似てるなと思いましたね。アルバムでは、ここに音を足そう、この音で行こうとか、1個1個決めなきゃいけないんです。床の石にしても、部品を決めて組み合わせて建物になった時に全体を見て、やっぱりこうしましょう、この色は変えましょうかとか細かく作り込んでいく作業が、とてもアルバム制作に似ているって感じました。

渡會:これはミュージシャンならではですね。銭湯全体がアルバムだとして、蛇口や壁絵の細部が楽曲という感覚になるんですか?
片岡:そんな感じです! すごく似てるなって思って。知らない大人たち、つまり建物なら職人さんと相談して一緒に決めていくという作業が、レコーディングスタジオのエンジニアさん達と一緒にアルバムを作っている感覚に近いなと思いました。

渡會:なるほど!音楽も銭湯も自らの考えをサポートしてくれる沢山の職人さんがいるからこそ、より良い状態で多くの人に思いを届けられるという事なんですね。本日はお時間をいただきありがとうございました。

 

TEXT:Shuhei Wakiyama(M-3)
Photo:Fumihiko Ikemoto(PYRITE FILM)

 

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16

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片岡シンさん

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プロフィール:1977年兵庫県生まれ。2003年に結成したバンド「片想い」のボーカル・三線として活動中。音楽レーベル、カクバリズムから数枚のアナログシングルをリリースした後に、2013年に発表したデビューアルバム「片想インダハウス」ではオリコンランキングで上位を獲得。「FUJIROCK’12」を皮切りに多数のロックフェスへの出演も多く、片想い独自の親しみやすいメロディがファンを増やし続けている。 2014年からはバンド活動と並行し、墨田区の老舗銭湯「御谷湯」の次期店主として運営を任され、番台そして次世代銭湯の未来を守り続けている。 御谷湯 http://mikokuyu.com 片想い http://kakubarhythm.com/artists/kataomoi

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