伝統を伝え、心を動かすモノ作りを
熱した金属を金鎚で叩いて成形していく金属工芸「鍛金(たんきん)」。今回は、伝統的な鍛金を巧みに操り、金工の作家として日用品やアクセサリー、そしてアート作品を生み出す宮田 琴さんのクラフトマンシップにフォーカスを当てる。
代々受け継ぐ金属工芸「鍛金」
--現在、鍛金の作家として活躍されている宮田さん。これまでの経歴を教えていただけますか?
宮田:第22代文化庁長官を務めた父・宮田亮平をはじめ、代々継承している金属工芸を家業に持つ家に生まれました。物心ついた頃から、父の仕事場や作品に触れていて、常にアートが身近な存在だったことを覚えています。最初に行った美術大学は中退をして、その後東京藝術大学美術学部の工芸科へ進学し、そこで本格的に鍛金(たんきん)を学びました。大学院も卒業してその後、大学に残り研究生として学びました。その後、2006年に自分の工房である「アトリエ鍛 〜たん〜」を設立しました。アトリエでの作品作りに加え「専門学校 ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」の非常勤講師なども務めてきました。その後、結婚と2児の出産を経て、食器類を中心としたプロダクトと展示目的のアート作品の制作に励んでいます。現在は並行して「女子学院」の非常勤講師も担っています。
--主にどのようなお仕事内容になりますか?
宮田:まず、鍛金とは、金属を炙って一度柔らかくした後に、当て金などにあて金鎚で叩いて形を作る仕事になります。昔でいう鍛冶屋さんと言った方がイメージつきやすいかも、結構な重労働ですね(笑)。私の場合は、この鍛金で主に食器類、アクセサリー、アート作品を制作しています。鍛金は、新潟県の伝統工芸として知られていますが、私のようにアート作品を作っている人は珍しいかもしれません。
金属との対話から生まれる作品
--宮田さんが生み出す作品の個性やこだわりは、どんなところにありますか?
宮田:金属という硬く無機質な素材を、鍛金ならではの手作りの温もりを加えたモノ作りをしています。そして、幼い頃から父や祖父の作品に触れてきた経験と知識、そして歴史や伝統をしっかりと伝えていきたい、という気持ちを込めた作品作りにこだわっています。最近の父の作品はスケールが大きく、力強い作品が特徴的。私の場合は、女性ならではの温かみや華やかな表現を得意としていて、自然と日常に溶け込んでいくような作品作りを心がけています。
--鍛金の魅力とは、どのようなものですか?
宮田:私は少々飽きっぽい性格なのですが、今までやってきたことの中で鍛金だけは全然飽きなかったんです。金属としっかり対峙しないとできないものだし、想定通りのものができる時もあるし、そうでない時も。金属との微妙な駆け引きありきで結果が変わるもの、モノと時間と自分の気持ちが合わさって、腑に落ちるもの。毎回それが楽しくて、鍛金での作品作りとは私にとって多くの魅力に溢れています。
「生きてる姿」を作品に込める
--宮田さんの作品が広く知れ渡ったきっかけを教えていただけますか?
宮田:「東京手仕事(https://tokyoteshigoto.tokyo)」という東京都が運営している伝統工芸品をバックアップするプロジェクトがあって、こちらに認定されたことがきっかけです。その結果、テレビや雑誌、WEBなど多くのメディアに紹介していただく機会に恵まれました。各媒体で紹介されるたびにオンラインでのオーダーが入り、納品するまでに最長で3ヶ月ほどお待ちいただくこともありました。
-「鍛金」からなる表現の魅力を語ってくれた宮田さん。後編では、宮田さんのモノ作りに対するこだわりをさらに深掘りしていく。そして話題は、今後の展望や夢についてにも。
また、宮田さんは、2023年5月20日(土)〜7月17日(祝)まで新潟、佐渡に伝わる宮田家の歴史をふり返る展覧会に出品。
雪梁舎設立30周年記念
「Miyata ―金工 宮田家のはじまりから、その先へー」
期間:2023年5月20日(土)〜7月17日(祝)
場所:雪梁舎美術館 新潟県新潟市西区山田451
TEL:025-377-1888
HP:https://www.komeri.bit.or.jp/setsuryosha/
INTERVIEW&TEXT&PHOTO:Daisuke Udagawa(M-3)
宮田 琴
https://koto-miyata-tankin.com
アトリエ鍛 〜たん〜
金工作家 宮田 琴
1976年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学(工芸工業デザイン科)を中退後、東京藝術大学美術学部(工芸科)へ入学。修了後、同校の大学院、研究生などを経て独立し「アトリエ鍛 〜たん〜」を設立。2005年、専門学校「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」の非常勤講師に就任。2009年には、江東区伝統工芸会(現・日本伝統工芸美術会)の会員となる。2014年、「女子学院」の非常勤講師に就任。第22代文化庁長官を務めた宮田亮平氏を父に持つ。
インスタ>https://www.instagram.com/koto.tankin/?hl=ja